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社内チャットと予定表を、月額サービスから自社のシステムに戻した。得たのは節約より、AIが読める記録

社内チャットと予定表を、月額サービスから自社のシステムに戻した。得たのは節約より、AIが読める記録

社内のチャットと予定表を、LINE WORKSから自社の社員マイページに移しました。勤怠の打刻や給与明細を見ているのと同じ画面に、「予定」と「チャット」を足した形です。LINE WORKSは2026年10月31日で使うのをやめ、いまは社内の連絡も予定も、自社のシステムの中にあります。

先に言っておくと、これは節約だけの話ではありません。使っていたのはLINE WORKSの有料版(スタンダードプランを3人分)で、利用料は月1,350〜1,620円(税抜・契約の形で変わる)。これは確かになくなりました。ただ、金額としては大きくありません。私たちが得たものの本体は、会話と予定が自社の手元に残り、AIがそれを読める状態です。そして、この判断は誰にでも勧められるものではない。真似しないほうがいい会社の条件まで含めて、少しまとめてみます。

捨てた理由は3つあり、どれも予定表の小さな不便でした

乗り換えのきっかけは、大きな不満ではありません。予定表で毎日つまずく、小さな不便が3つ。それが積み重なっていました。

  • 「今日」の予定を一発で開くリンクが作れない。開くたびに「今日」ボタンを押す
  • 自分以外の人の予定を、自分を含めずに入れられない。登録すると必ず自分が参加者に入る
  • 他の人の予定を変更できない

どれも、使っていた間は直りませんでした。少人数の会社で予定表が果たす役割は、「自分の管理」より「相手の把握」です。誰かが代わりに入れる。誰かが直す。その動きが封じられると、予定表は全員が見る1枚になりません。

人が代わりに入れられない予定表は、結局どこかで手の転記が起きます。転記は必ずずれる。全員が同じ1枚を見て、誰でも直せること。予定表の第一の仕事はそこにある、と考えました。

本当の理由は、会話と予定が自社に残りAIが読めること

3つの不便だけなら、別の既製品に乗り換えれば済みます。自分たちで作った理由は別にあります。会話と予定を自社のデータとして持ち、AIが読める状態にしておくことです。

私たちが使っていた有料版でも、トークの内容を取り出すには管理者に専用の権限を付ける必要があり、1回に取り出せるのは最長31日分です。話題ごとに会話を分ける「スレッド」の機能は、プランを問わずありません。既製品の上で同じことをやろうとすると、毎月の取り出し作業を誰かが続けることになります。

MINEのチャット画面。チャンネルの中に話題が並び、話題ごとに会話がまとまっている
MINEのチャット。会話は話題ごとに分かれて残る(画面は説明用の試験データ)

いまは毎朝、AIが自社のシステムから今日の予定を読み、朝の確認に出してくれます。チャットの会話を会社の記録に取り込む仕組みは、まだ作っていません。必要になった時点で、手元にあるデータをそのまま読みにいけばいい。これが既製品ではなく自社で持つ、唯一の構造的な理由です。逆に言えば、AIに読ませる気がないなら既製品のままで足ります。

MINEの予定画面(スマートフォン)。その日の予定がメンバーごとに一覧になっている
MINEの予定。その日の全員の予定が一覧になり、AIも同じデータを読む(画面は説明用の試験データ)

条件は「打刻の手数を1手も増やさない」こと

作ると決めた日に、条件をひとつだけ置きました。打刻の手数を1手も増やさない。そのため予定とチャットは別の製品にせず、社員が毎日開く社員マイページの中に組み込んでいます。

当初は、勤怠とは別のグループウェアとして作る案でした。ただ、入口が2つになると、どちらかが開かれなくなる気がしていました。社員マイページはすでに全員の端末に入っていて、一度登録すれば毎日ログインしなくていい作りです。そこに画面を足すだけなら、新しく覚えることは少なくて済みます。

作ると決めたのは2026年9月13日で、最初の版を本番に出したのは9月15日です。9月23日に4人全員の端末で動くことを確かめ、予定の正本をこちらに移しました。

作る前に、やめる条件を数字で決めた

この記事でいちばん伝えたいのは、ここです。作る前に、やめる条件を数字で決めました。線を先に引いておけば、自分で作ったものへの愛着で判断が曇りません。

数えるもの

やめる線

見ているもの

業務の会話が、LINE WORKSや個人のLINEに逃げた件数

週3件以上

使いにくくて、元の道具に戻っていないか

予定の転記ミス

月1件以上

予定表が「全員の1枚」になっているか

佐藤が保守にかける時間

週2時間超

作った人間が、保守に食われていないか

稼働1か月の時点でどれか1つでも超えたら、既製品に切り替えます。戻り先も決めてあります。LINE WORKSの有料版に戻して定期的な取り出しを組み合わせるか、自社のサーバーで動かす既製のチャットです。

この基準は、私が思いついたものではありません。要件の段階で別のAIに計画を反証させ、54件の指摘が返ってきました。その中に「採用/撤退を判断する成功指標がない」という1件があり、そのまま採用しています。数えないと、「動いている」で通ってしまう。自作のシステムが静かに使われなくなるのは、たいていこの形です。

正直に書くと、この3つを自動で数える仕組みはまだ作っていません。線は引いたが、まだ数え始めていない。ここは次の宿題です。

作り方は、AIに書かせて別のAIに反証させた

作業の大半はAIに任せました。Claude CodeとCodexという2つのAIを並行で動かし、書いた側とは別のAIに、できあがったものの粗を探させています。画面を反証させたときは16件の指摘が返り、うち15件が本物の不具合でした。たとえば、一覧を読み込んでいる最中に届いた投稿が、いつまでも表示されないという順序の問題です。

同じAIに確認させると、同じ見落としを繰り返します。書く役と疑う役を、別のAIに分ける。技術の細部より、この役割分担のほうが真似する価値がある気がしています。

手放したものは、作る前に書き出した

自社で作るということは、既製品にあるものを捨てるということです。何を作らないかは、作る前に決めて文書に残しました。

  • 通話:音声やビデオの通話は作っていません。LINEの通話で足ります
  • 社外とのやりとり:取引先は招待しません。社外の連絡はChatworkとメールのままです
  • カレンダーの同期:Googleカレンダーなどとはつないでいません。社外の予定は手で入れます
  • 繰り返しの予定:設定できるのは「毎週」だけ。定例会議に使えれば十分という判断です
  • 添付ファイルの保存:チャットに貼ったファイルは30日で消えます。残すものは別のファイル共有の仕組みに置きます
  • 通知:最初の版は通知なしで出しました。開いたときに未読が分かれば足りる、という割り切りです

条件がそろわない会社には、この判断を勧めない

自社のシステムに戻すのが正解なのは、限られた条件のときだけです。次の表に1つでも当てはまるなら、既製品のまま使い方を整えるほうが安全です。

当てはまる条件

向かない理由

代わりの選択

作ったものを直せる人が社内にいない

直す人がいなくなった日に止まる。外注任せだと、小さな不便が直るまで待つことになる

既製品のまま運用ルールを整える

経営者自身が毎日開かない

使う主が1人に偏る道具は、その人が開かない日が続くと全員が開かなくなる

既製品で十分

連絡の大半が取引先とのやりとり

社内だけ移しても外とは別の道具が残り、情報が散らばる

取引先と同じ既製品に寄せる

会話や予定をAIに読ませる予定がない

自作する構造的な理由が消え、残るのは見た目の好みだけ

既製品のままで足りる

今の道具の使い方すら決まっていない

道具を替えても、決めていないことは決まらない

先に使い方のルールを決める

やめる条件を数字で書けない

愛着で使い続け、静かに使われなくなる

書けるまで作らない

地方の小さな会社は、取引先と同じ道具を使う場面が多いかもしれません。社内の連絡が中心で、経営者が自分で手を入れられる。その2つがそろって、初めて検討の土俵に乗ります。

よくある質問

プログラミングができない経営者でも、自社のシステムは作れますか

作ること自体は、AIの助けで以前よりずっと現実的になりました。ただ、作るより直し続けるほうが重い。保守に週何時間まで使ってよいかを先に決め、超えたらやめる。その線が引けないなら、まだ早いと思います。

費用はどれくらいかかりましたか

基盤はクラウドサービスの有料プラン(月5ドル)で、社内の他の仕組みと共用しています。ただし、作る時間と直す時間は別にかかります。なくなったLINE WORKSの利用料は3人で月1,350〜1,620円(税抜)なので、お金の差はわずかです。作る時間と直す時間まで数えれば、費用の面ではむしろ高くついています。

やめる基準を超えたら、本当に戻すのですか

戻します。そのために、戻り先も先に決めてあります。戻り先を決めずに作ると、やめるという判断そのものができなくなるからです。

道具を選ぶ前に、記録の置き場所を選ぶ

チャットや予定表を選ぶとき、多くの会社は機能と値段で比べます。私たちが比べたのは、会話と予定がどこに残るかでした。機能はむしろ減っています。それでも戻したのは、AIが会社のことを分かるかどうかは、記録がどこにあるかで決まると考えたからです。

AIに自社のことを聞いても、的外れな答えしか返ってこない。その原因が、記録が月額サービスの向こう側に散らばっていることにある会社は、少なくない気がしています。道具はいつでも替えられます。記録の置き場所を決めるのは、早いほうがいい……。

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