2025/9/23
オペレーショナル・デットとは企業の虫歯である。
なぜ黒字なのに苦しいのか?
「売上は伸びているのに、なぜか利益が手元に残らない」。
中小企業の経営者からよく聞く悩みです。帳簿上は黒字なのに、実際には資金繰りが苦しい。社員は忙しく動いているのに、競合との差は広がるばかり。この“なぜか”の正体が、オペレーショナル・デット(運用負債)です。
目に見える赤字ではなく、日々の非効率や古い仕組みによって積み上がっていく隠れた赤字。それは静かに企業体力を削り続け、成長を阻む要因となっています。

オペレーショナル・デットとは何か?
この概念は、ソフトウェア開発における「技術的負債」から派生しています。技術的負債が「とりあえず動くが将来の保守性に問題を抱えるコード」を指すのに対し、オペレーショナル・デットは「一応回っているが、本来あるべき効率を欠いた業務プロセス」を意味します。
つまり、今日のやり方で回っているからと放置してきたことが、現在と、未来の成長を奪っているという状態です。
あるあるですよね…。
中小企業に潜む「隠れ赤字」の実態
オペレーショナル・デットはどの企業にも存在します。たとえば、本来自動化できる作業をいまだに手作業で続けているケース。経理担当者が毎月Excelで同じ数字を何度も入力する。請求書を一枚ずつ手で作成し、郵送する。在庫を紙で数えて記録する。いずれも「昔からやっているから」という理由で続けられている仕事ですが、そこにかかる人件費やミスのリスクを換算すれば、莫大な赤字を垂れ流していることになります。
あるいは「まだ使えるから」と古いシステムを延命し続ける会社も少なくありません。システム更新の投資をせずに、サポートが切れ、他のツールとも連携できない仕組みを維持するために、逆に人の手で補完作業を増やす。結果として投資コスト以上に非効率な業務の為に固定費が浪費されていく。本末転倒な状況を何度も目にしてきました。
さらに深刻なのがこういった、オペレーショナル・デットに絡みつく、業務の属人化です。ある社員しか分からないやり方で業務が回っている。もしその人が休めば仕事は止まり、辞めればすべてが失われる(…と思っている)。
業務の属人化は大抵の経営者は気づいているはずですが、そこに手を入れるタイミングを計りかねている状況のまま放置というのが常です。これは、組織全体にとって極めて大きな負債であり、成長を阻む要因であり、良いことはほとんどありません。

なぜ「見えない赤字」なのか?
オペレーショナル・デットは、目に見える損益計算書には現れません。だからこそ「赤字」とは気づかれにくいのです。
しかし時間コストで換算すれば、その影響は数字で可視化されます。
例えば、月次集計に20時間をかけている業務があるとしましょう。担当者の時給を3,000円とすると、月に6万円、年間では72万円が失われている計算になります。しかもそれは「必要のない作業」に払っているお金です。さらに、その時間を新規顧客開拓やサービス改善に回せば得られたはずの売上を考えると、機会損失はもっと大きいのです。
長期的に企業を蝕む影響
オペレーショナル・デットを放置すると、ただコストが増えるだけではありません。非効率な業務は顧客への対応スピードを遅らせ、品質のばらつきを生み、結果的に競争力を低下させます。利益が薄いため新しい投資に回す資金も生まれず、さらに差が広がる。これは典型的な悪循環です。
また、現場の従業員にとっても負担は大きいはずです。本来、顧客対応や改善に時間を割きたいのに、意味のない手作業に追われる。一部のベテラン社員の業務属人化の為に、無駄な調整が発生し、やりがいは失われ、優秀な人材から辞めていく。これもまた、企業にとっては看過できない深刻な問題ではないでしょうか。
改善は「投資」として考える
オペレーショナル・デットを解消するには、大規模なシステム導入が必須ではありません。まずは業務プロセスを可視化し、どこに無駄があるのかを明らかにする。影響が大きく、改善しやすいものから手をつけていけばいいのです。
例えば、無料のクラウドサービスやプロジェクト管理ツール、グループウェアを全社導入するだけで会議時間が30%削減された例もあります。つまり改善は「コスト削減のための節約」ではなく、未来の競争力を高めるための投資として位置づけるべきなのです。
オペレーショナル・デットを放置すると起こること
- 利益率の低下:見えないコストが積み上がり、いくら売っても儲からない構造になる
- 競争力の喪失:顧客対応が遅れ、品質にばらつきが出て、競合に後れを取る
- 投資余力の枯渇:利益が出ないため、新規投資や人材育成に回す資金がなくなる
- 従業員の疲弊と離職:無駄な作業が増え、優秀な人材から辞めていく
- 業務の属人化リスク:一部社員に依存し、退職や休職で業務が止まる
- 組織全体の停滞:改善できない文化が定着し、変革の機会を逃す
オペレーショナル・デットは中小企業の虫歯です。
オペレーショナル・デットは、現場と経営者が「仕方ない」と思って見過ごしてきた悪い慣習の積み重ねです。つまり、人間で言うところの「虫歯」と言えます。
「虫歯」は通常生活において、初期〜中期は我慢が出来てしまいます。なんか痛いな〜と思いつつも、生活に支障がない、仕事も出来るし、食べたり飲んだりも出来る。しかし、放置して気付いた頃には、高い治療費と時間をかけて歯医者に行く羽目になります。
経営者は数字をよく見ているはずですが、オペレーショナル・デットに対しては非常に感度が低く、その負の影響を過小評価しているというのは、私たちが事業会社にいた経験からも、そして様々な企業とお取引をしているなかで感じる、偽らざる本音です。
結局は、経営者がそこに対して動かない限りは、改善はしません。ここに関しては虫歯と全く同じで自己治癒はし得ないのです。
オペレーショナル・デットを放置すれば、利益率は下がり、投資余力は削られ、優秀な人材は離れていきます。気づけば「歯がボロボロ」になった会社の立て直しには、治療どころか再建のレベルのコストがかかります。
だからこそ、今すぐ着手するべきなのです。
私たちハイデフは、戦略を語るだけでなく、現場を一緒に動かす「実務家」としてこの課題に取り組んでいます。隠れた赤字を見つけ出し、歯を磨くように日々の業務を整える。その積み重ねが、会社の未来の競争力を確かなものにしていくと信じています。
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