仕事の場で「ユーモアが大事ですよね」と言うと、なんとなく雑談が上手な人、場を盛り上げる人、みたいな話にズレていくことがあります。でも、私がここで言っているユーモアは、もう少し実務寄りの話です。「説明がちゃんと伝わるか」「相手の頭に残るか」という、ごく現実的な話。マーケティング、ブランド、デザイン。正直、これらの言葉だけで身構えられてしまうことは多いです。こちらが悪気なく専門用語を並べただけで、「なんか難しそう」「よく分からないけど任せておこう」そんな空気になることも少なくありません。だからこそ、説明するときには、意識的に“楽しさ”を混ぜたいと思っています。偉そうに理屈を並べるより、その方が圧倒的に話が前に進むからです。専門用語やロジックを、そのまま正面から投げるのは、あまり得策ではありません。それよりも、たとえ話を使う。しかも、そのたとえが「相手の世界」に寄っているかどうかが重要です。犬派なのか、猫派なのか。出身地はどこか。年代はどのあたりか。こうした情報を拾って話すだけで、距離感は驚くほど縮まります。特に犬派・猫派の話は、使い勝手がいい。どちらも好き、という人は意外と少なくて、たいていどちらかに偏っています。犬好きに犬の例えを出すと、話はスッと入る。逆は、静かに地雷を踏みます。話が上手い人、説明が上手い人をよく観察していると、共通しているのは「相手を楽しませようとしている」という点です。よく「大阪の人は面白い」と言われますが、あれは才能というより、環境の影響が大きいと思っています。子どもの頃から「面白いことを言える人」が評価される文化がある。クラスで一番面白いやつが、なんとなくヒエラルキーの上にいる。そういうインセンティブの中で育っている。一方で、そうではない地域の人間は、この「相手を楽しませる」という行為を、意識的にやらないと身につきません。でも、ここはサボらない方がいい。なぜなら、面白くて仕事ができる人は、個人としてもチームとしても、影響力が掛け算になるからです。仕事ができるけど、面白くない人は、正直たくさんいます。逆に、面白くて仕事ができる人は、驚くほど少ない。周りを見渡せば、思い当たる顔が浮かぶ人もいるはずです。ちなみに、「面白いけど仕事ができない人」も、結構います。ビジネスの成果だけを見れば評価しづらい存在ですが、組織の中では、不思議とハブになっていたりする。数値化しにくいけれど、確実に空気を良くしている。そういう人です。結局のところ、「面白い」というのは、ビジネスにおいてかなり実用的な能力なんだと思っています。マネジメントの本には、あまり大きく書かれていませんが。ちなみに、ブランドの世界でも、ユーモアを感じるブランドの方が選ばれやすい、というデータは普通にあります。真面目であることと、堅いことは、必ずしも同義ではない。このあたりは、もう少し素直に捉えてもいいのかもしれません。8割がユーモアのあるブランド好む 日本オラクル調べ